カテゴリ: キャッシングニュース
キャッシングやカードローン、消費者金融に関するニュースのスクラップ記事。
根深きイオン銀行の過剰請求、システムに日割り利息計算機能が事実上なし
イオンカードのキャッシングサービスで、長年にわたって過剰請求が生じていたことが明らかになった(関連記事:イオン銀行が2400件の過剰請求、10年近くも利息計算を誤る)。直接の原因は利息の日割り計算誤りだが、根は深い。「にわかには信じがたい」と関係者が驚くのは、イオンクレジットサービス(ACS)の業務システムに事実上、利息の日割り計算機能が存在しなかったとみられることだ。
イオン銀行が約2400件、約600万円の過剰請求を発表したのは2016年4月22日のこと。親会社であるイオンフィナンシャルサービスは、「事務オペレーション上のミスがあった」と説明する。イオン銀行から業務委託を受けて事務処理に当たっているのが、同じイオンフィナンシャルサービスの子会社であるACSだ。
事務処理の際に利用しているのは、ACSが2005年に構築した業務システムだ。ただこのシステムは、日割りの利息計算を機械的に実施できない仕様になっていた。
つまり複雑な利息計算を、事務担当者が手作業で実施せざるを得ない状況だった。「かなり特殊な処理を除き、一般的にはシステムで計算するものだ」(あるITベンダーの金融分野担当者)。
またこの業務システムは、約10年前の稼働開始当初からシステム障害が頻発し、現場が混乱に陥った経緯がある。「システム装置産業」とされる金融機関にあって、情報システムに対する企業意識の甘さがうかがえる。
本誌は内部資料を入手。過剰請求に陥った原因が分かってきた。
日割り計算ができないとはどういうことか
イオンカードのキャッシングを利用する際の流れは、ほかのクレジットカード同様で、基本的にシンプルだ。翌月返済の場合は、キャッシングした金額(元金)と、融資日から翌月2日までに掛かる利息の合計額が、指定口座から引き落とされる
7月1日に3万円をキャッシングしたとしよう。この場合、元金である3万円と、7月1日~8月2日に掛かる利息である458円(実質年率18.0%の場合)を返済することになる。
ただしキャッシング利用者が、返済利息を減らすために、元金の一部を口座振替よりも前に早期返済することがある。その際は、一部入金時点以降の利息は、元金から一部入金分を差し引いた金額を基に日割り計算しなければならない。
ところがACSの業務システムには不備があり、事実上、この日割り計算ができない。
具体的な例で説明する。ある利用者が7月31日に20万円をキャッシングし、8月10日に10万円を一部入金したとしよう。9月2日に、残りの全額を指定口座から引き落とされるものとする。一部入金がなければ、9月2日に利息(ここでは4488円)も引き落とされる。ただし、一部入金があった場合は、本来、次のような利息計算が必要になる。
まずキャッシングした元金20万円に対して、7月31日~8月10日の期間に掛かる利息を計算する(「利息計算1」とする)。ここでは計算した利息を、1402円としよう。8月10日に一部入金された10万円の内訳は、利息である1402円を引いた9万8598円が元金返済に充当されたことになる。
この時点で、新しい元金は10万1402円となる。9月2日に引き落とされるのは、新元金である10万1402円と、新元金に対して8月10日~9月2日の間に掛かる利息は1564円(「利息計算2」とする)。合計10万2966円である。
これが本来あるべき、一部入金時の日割り計算処理だ。
日割りをするとイオンが「損をする」
ACSの業務システムには、日割り処理をする機能そのものは存在している。システム上は、「日割りあり」と「日割りなし」が選択できたようだ。ただし、いずれの処理にも不備があり、実際には手作業で計算していたとみられる。
「日割りあり」での処理には、利息計算1は正常に実行するものの、利息計算2を実行しないという不備があった。この場合、イオン側は本来返済されるべき金額よりも少ない金額しか徴収できない。
先ほどの例でみてみよう。8月10日の一部入金時点では、適切に利息を計算する。つまり、7月31日~8月10日の利息1402円を算出し、新元金は10万1402円となる。
ところが9月2日の引き落とし日には、新元金10万1402円に対する利息計算はせず、新元金である10万1402円だけを引き落とす。8月10日~9月2日に掛かる利息がゼロになってしまうわけだ。
一方「日割りなし」を選ぶと、利息計算1の時点で口座振替までの利息4488円を計上してしまう不備があった。キャッシング利用者が一部入金して早期返済する意味がなくなってしまう処理だ。
具体例でみると、8月10日の10万円の一部入金時点で、利息を4488円と算出する。元金返済の充当分は9万5512円となり、新元金は10万4488円に設定される。最終的に、9月2日に10万4488円を引き落とすわけだ。この場合、明らかに過剰な請求をすることになる。
こうした不備があったため、業務システムに実装していた利息の日割り計算機能は使えず、手作業に頼らざるを得なかったとみられる。
業務システムが稼働したのは、2005年3月である。イオンはおよそ10年間にわたって、こうした状況を放置してきたことになる。
イオンのシステム運用や業務の進め方に見られる甘さは、今に始まったことではない。現行の業務システムはそもそもトラブル続きの、いわく付きのシステムだった。
稼働直後からトラブルが頻発。早期完済や一部入金が充当されない、指定口座の変更情報が反映されない、といった事象が続いた。4カ月の間、現場は対応に追われ、混乱に陥ったという。
このページをご覧になられた方は下記も閲覧されています。
参照元:IT PRO
http://itpro.nikkeibp.co.jp/atcl/column/16/050900103/051100002/
掲載日:20160512
次のニュース≫三井住友FG、17年3月期は当期利益+8.2%前のニュース≫イオン銀行が2400件の過剰請求、10年近くも利息計算を誤る